[一般住宅]
こんせき【痕跡】過去に何かがあったことを示すあと。あとかた。出典:大辞林 第三版
金沢の中心市街地に昭和初期に建てられた木造2階建ての住宅。
町家と言えるほど町家の風情を残すわけでもなく、そこに住まう家族の成長とともに増改築を行なってきたようだ。
この度、この住宅を購入され、家族3人で住まうためのリノベーションを行うことになった。
以前の間取りは新しい生活スタイルにはあわないので、古くなった水まわりの更新とともに間取りを大きく変え、1階をほぼワンルームのLDKに。
中庭をぐるっと囲むL型のLDKは、リノベーションならではの不整形な形の部屋で、その不整形な形が、逆に生活スタイルを浮かび上がらせる要素となる。
そして、壁や天井を撤去して現れた柱や梁が、その空間の中で存在感を持ち始める。
建設当時の要素、増改築の要素、そして今回のリノベーションの要素がそれぞれ存在感を持って共存することで、新しい意味を持ち始める。
建物の痕跡に反応して、新しい空間が浮かび上がる。
そして、新しくリノベーションされたこの家で、3人の生活が始まり、新たな痕跡が刻みこまれる。
そんな痕跡に愛着を持って、住まい続けて欲しいと考えている。
「気になる中古物件があるが、どのように活かせるか分からず購入を悩んでいる。」とのご相談を受けたところから、お客様の家づくりははじまりました。
すぐにお客様のイメージに合った建築家を紹介し、現場視察を経て、購入へと至りました。
リノベーション計画ということで、出来ること・出来ないことの制限がある中、お客様の要望に合わせた間取りが提案されていきました。
建物がもともと持っている性質を正すこと(断熱・床・梁・柱補強)に加えて、“見た目重視”というお客様からの条件を吉村先生に上手に汲み取っていただけたのではないかと思っています。
工事途中でお客様から、「2Fの和室にあった床の間部を吹抜けにできないか」との提案があり、それらも実現されています。
これは、設計中には諦めた要望の1つでもありました。
実際に何度も足を運んでいただいたからこそ、出来上がったポイントだとも思っています。
古いからといってすべてを新しくするのではなく、古さも活かして新しい空間を作り上げることを好まれたお客様にぴったりなお家が出来上がりました。
プレゼン・設計・工事においての感想
ありがとうございました。